Linuxカーネルの重大な脆弱性(CVE-2026-98432)によるカーリルへの影響について

2026年10月15日、Linuxカーネル(Linux OSの中核部分)のネットワーク処理に重大な脆弱性(CVE-2026-98432)があることが公表され、あわせて修正版が公開されました。細工したパケットを送りつけることでサーバーを停止させたり、条件によっては認証なしでリモートからプログラムを実行されたりするおそれがある問題です。10月27日(米国時間)には、この脆弱性を発見したAnthropic社が、特定の条件で遠隔から管理者権限を取得できることを実証したと公表しました。

カーリルが提供する各サービス(カーリル、Unitrad API、カーリル for AI、学校図書館支援プログラムなど)はLinuxサーバー上で運用しており、本脆弱性の影響を受けるサーバーが含まれます。10月30日時点で、本脆弱性を悪用した攻撃は世界的にも報告されておらず、カーリルのサービスにおいても不正アクセスや情報漏えいなどの被害は確認されておりません。

カーリルでは次の対応を実施しています。

  1. 配布元(OSの提供元)から修正版カーネルが提供されているサーバーには、修正版を適用して再起動を完了しました。
  2. カーリルが使用しているLinuxディストリビューションの一部では、10月30日時点で配布元から修正版が提供されていません。これらのサーバーには、脆弱性の引き金となる「IPオプション付きのTCPパケット」をファイアウォールで遮断する緩和策を10月30日に適用しました。通常のウェブ通信ではIPオプションは使われないため、この設定が利用者や図書館の皆さまの利用に影響することはありません。修正版が提供され次第、順次適用します。適用に伴い、カーリルの各サービスが停止したり不安定になる可能性があります。

これまでの作業に伴うサービスの停止は発生していません。利用者の皆さま、図書館の皆さまによる対応も不要です。

なお、本脆弱性はLinuxを使用するサーバー全般に影響するため、各図書館の蔵書検索システム(OPAC)でも順次対応が行われるものと考えられます。各館のシステムは、それぞれの図書館およびシステム提供事業者が管理しています。各館のシステムがメンテナンスなどで一時停止している場合、カーリルで検索結果が表示されないことがあります。

図書館の皆さまへ:セキュリティを「確認」から「理解」へ

今回のような脆弱性が公表されると、図書館からシステム事業者に対して、セキュリティチェックシートやアンケート形式での確認が行われることがあります。利用者の情報を預かる機関として、事業者の対応を確認することは大切です。カーリルでは、いつでもカーリルのセキュリティ対策状況を確認できるよう、セキュリティホワイトペーパーを提供しています。問い合わせの前に、一度ご確認いただくようお願いします。

今回の一連の脆弱性対応にあたっては、脆弱性の内容を踏まえないまま、「ウイルス対策ソフトを導入していますか」「パスワードを定期的に変更していますか」「セキュリティ責任者を置いていますか」といった一般的な項目への回答を求めるケースも少なからず見受けられます。今回の脆弱性はOSの中核部分の問題であり、こうした対策の有無や責任者の確認では防ぐことも、影響を判断することもできません。

本当に重要なのは、影響を受けるシステムを把握し、修正版を適用すること、そして修正版が出るまでの間に有効な緩和策をとることです。

そして図書館に求められているのは、事業者の対策を点検することよりも、リスクをどこまで許容するかを明確に伝えることです。修正版の適用や緩和策には、サービスの一時停止をともなう場合があります。そのとき「止まるのは困る」と求めることは、脆弱性を抱えたまま運用を続けるリスクを、利用者に負わせる判断でもあります。どの程度のリスクなら受け入れ、どこからは停止してでも対策を優先するのか。その線引きを明確にしてください。

情報セキュリティは、一度学べば終わりというものではありません。攻撃の手法も、守り方も変わり続けています。図書館が利用者の情報を守り、事業者と実のある対話をするためには、図書館関係者一人ひとりが正しい理解をもち、学び続けることが欠かせません。無意味な儀式は、いますぐ停止してください。

カーリルでは今後も情報収集を続け、必要に応じてお知らせします。


サイバーハック体験版:攻撃を受けたときの初動を体験する

図書館総合展にあわせて、図書館向けに、サイバー攻撃を受けたときの初動対応を疑似体験できる教材「サイバーハック体験版」を公開しました。特に、図書館の情報セキュリティ責任者の方に向けた教材です。実際の事例と公的機関の資料をもとに作っています。

https://try.calil.jp/cyberhack

PHPの重大な脆弱性(CVE-2026-109618/CVE-2026-109619)によるカーリルへの影響について

2026年10月20日、PHP開発チームよりPHPの重大な脆弱性2件が公表され、10月21日(日本時間)に修正版が公開されました。認証なしでリモートからプログラムを実行されるおそれがある、深刻度の高い問題です。

カーリルが提供する各サービス(カーリル、Unitrad API、カーリル for AI、学校図書館支援プログラムなど)は、PHPを使用していません。そのため、本脆弱性による影響はありません。利用者の皆さま、図書館の皆さまによる対応も不要です。

当ブログ(blog.calil.jp)はWordPress(PHP)で運用しています。このため、10月21日より予防的に運用を停止しました。10月22日早朝に修正版へのアップデートを完了しています。

なお、各図書館の蔵書検索システム(OPAC)は、それぞれの図書館およびシステム提供事業者が管理しています。各館のシステムが一時停止している場合、カーリルで検索結果が表示されないことがあります。

今後も情報収集を続け、必要に応じてお知らせします。

図書館総合展2026に出展します&いまやってることリスト #7

10月20日(火)〜22日(木)の3日間、パシフィコ横浜で開催される「図書館総合展」にカーリルが出展します。図書館総合展は、全国の図書館関係者、自治体、教育機関、図書館システムの開発者、そして図書館に関心のある方が一堂に会する、国内最大の図書館に関する展示会です。

ひとやすみしませんか?

今年のカーリルブースのテーマは「ひとやすみしませんか?」です。新しい技術やサービスが次々に登場するなかで、これまでカーリルが大切にしてきた「ゆるくつながる、かるいしくみ。」を、もう一度お伝えするブースにしたいと考えています。広い会場を歩き回って疲れたら、ちょっと立ち寄って、ひとやすみしていってください。

この記事では「いまやってることリスト #7」として、ブースでご紹介する開発中の取り組みをひと足先にまとめました。開発チームが直接ご説明しますので、気になるものがあれば、ぜひ声をかけてください。

  • 会期:2026年10月20日(火)〜22日(木)10:00〜18:00
  • 会場:パシフィコ横浜 ホールC・アネックスホールほか
  • ブース:53
  • 入場:無料(図書館関係者以外の方も歓迎です)

カーリル for AI:大幅アップデート

2025年10月に始めた「カーリル for AI」は、Claude や ChatGPT などの AI から、図書館の蔵書を直接検索できるサービスです。この10月、大幅にアップデートされました。

全国10,000館以上の蔵書を、AIから。図書館利用者・図書館司書・研究者が、Claude・ChatGPT・MCP 対応 AI・ローカル LLM などから、MCP でカーリル for AI を通じて、国立国会図書館・県立図書館・市立図書館・公民館図書室・大学図書館・専門図書館・学校図書館の蔵書を検索するしくみの図
  • ChatGPT、Claude の公式ディレクトリに掲載。それぞれのアプリ・コネクタの一覧から「カーリル」を探して、すぐに追加できます
  • 検索できる図書館が10,000館以上に。公共図書館・大学図書館・専門図書館に加え、カーリル学校図書館支援プログラムに登録した学校図書館も検索できるようになりました
  • API キーで連携できるように。ログイン連携なしで、自社のチャットボットや業務システム、Dify・n8n などのワークフロー基盤、Claude API・OpenAI API の MCP コネクタに組み込めます。キーごとに検索する図書館を選んでおくので、AI が図書館を探し回らずにすぐ検索できます
  • 組織での導入にも。自治体や企業、大学などが職員向けに導入している AI 環境に、管理者が1つのキーを設定するだけで、職員一人ひとりのログインなしで使えます

サイバーハック体験版:攻撃を受けたときの初動を体験する

図書館総合展にあわせて、図書館向けに、サイバー攻撃を受けたときの初動対応を疑似体験できる教材「サイバーハック体験版」を公開しました。特に、図書館の情報セキュリティ責任者の方に向けた教材です。実際の事例と公的機関の資料をもとに作っています。

サイバーハック体験版の画面。報告書を受け取ってからの経過時間と、図書館に関係する写真の流出状況が表示され、市の情報政策課の職員と館長を前に「報告書のこの一文を、どう受け止める?」という問いに3つの選択肢から答える
サイバーハック体験版の画面。状況を見ながら、初動の判断を選んでいく

https://try.calil.jp/cyberhack/

furikake:書名と著者名に、ふりがなを

図書館の目録には、書名と著者名のヨミがカタカナで入っています。ただ、それは書名全体の読みで、どの漢字をどう読むかまでは持っていません。furikake は、目録のヨミを漢字のまとまりごとに切り出して対応づけ、ルビとして表示できる形にする取り組みです。

目録の書名「物理学とは何だろうか」とヨミ「ブツリガク トワ ナンダロウカ」から、漢字ごとにルビを付けた表示を作る例。ほかに「魔法科高校の劣等生」「都会のトム&ソーヤ」「洪 在徹」の例
目録の書名とヨミから、漢字のまとまりごとのルビを作る

読みを推測して付けるのではなく、その書誌のヨミだけを手がかりにルビを構成します。既存の辞書やコーパスから決まらない部分だけを LLM に回し、その答えもヨミと位置が合うものだけを採用します。全国規模のサンプル書誌で評価したところ、誤ったルビが出た書名は約0.1%、漢字の約85%にルビを付けられました。

ichimi:蔵書検索を、速く・軽く

Elasticsearch などの全文検索エンジンに頼らない、軽量でスケーラブルな次世代の蔵書検索エンジンです。図書館ごとに小さな検索インデックスを作り、そのファイルを直接検索します。1万冊の学校図書館なら、インデックスは数秒で作れて、1回の検索は約1msです。

いまの蔵書検索と比べて、上位10件の検索結果の重なりは94.8〜97.4%、応答の中央値は0.2〜1.2msでした。小さな図書館ならブラウザの中だけで検索することもできます。「認知症のお年寄りとどう接したらいいか」のような文章で尋ねても本が見つかる、意味検索にも対応しています。

オープンソース化を視野に入れ、学校図書館支援プログラムの次世代の基盤として導入する予定です。

haika2:配架図を、データにする

多くの図書館は、配架図を PDF や画像で公開しています。書架を動かしたり分類の区切りを変えたりするたびに描き直しになり、OPAC の「この本はどこにあるか」とも結び付きません。haika2 は、書架の配置と本の並びをデータとして持ち、配架図や案内はそこから作る配架図エディタです。2014年に作った初代 haika の経験をふまえて、作り直しています。

全国の公共図書館・大学図書館が公開している配架図 3,676点(1,268館)を収集・分析し、曲面書架や集密書架、平行移動棚まで描けるデータモデルを作りました。ブースでは実際のエディタを触っていただけます。

haika2 で描ける書架の例。曲面(円弧)書架、集密書架、平行移動棚、壁面書架
haika2 で描ける書架の例

冊子「いまやっていることリスト #7」をお配りします

ブースでは、カーリルの取り組みをまとめた冊子「カーリル いまやっていることリスト #7(2026 AUTUMN – 2027 SPRING)」をお配りします。この記事でご紹介した取り組みのほか、Unitrad API、書店在庫情報プロジェクト、カーリル学校図書館支援プログラム、ゆるくつながる連携の取り組み、ISO 27017 認証の取得、そしておすすめのボードゲームまで、36ページにまとめました。

冊子「カーリル いまやっていることリスト #7 2026 AUTUMN - 2027 SPRING」の表紙。湯気の立つマグカップの中で人がくつろぐ線画に「ひとやすみしませんか?」の文字
「いまやっていることリスト #7」の表紙

図書館総合展は入場無料です。パシフィコ横浜のカーリルブースで、皆さまのお越しを心よりお待ちしております。

Googleログインで一部ユーザーに発生したアカウント重複について

2026年6月1日に実施したログイン機能のアップデートにおいて、Googleログインをご利用の一部のユーザーの方に不具合が発生いたしました。

この影響により以前のアカウントとは別に新しいアカウントが作成される不具合が発生しました。これにより一部のアカウントの「読みたいリスト」などの情報に一時的にアクセスできない事象が発生しており、88件のアカウントが影響を受けていることが分かりました。

なお、対象となったユーザーにおかれましては、この不具合の影響によるデータの消失はなく、またセキュリティ上の問題もございませんのでご安心ください。

影響を受けた方には個別にメールでもご案内を開始しておりますが、専用画面からご自身での復旧、または2026年7月31日に実施する自動復旧により、以前のアカウントは元に戻ります。ご利用のみなさまには大変ご不便をおかけし、深くお詫び申し上げます。

影響を受けたアカウントにはトップページ上部に復旧についての案内を表示していますので案内に従って復旧手続きを実施してください。表示のないユーザーの皆様に影響はありません。

タイムライン

  • 2026年6月1日 Googleログインの連携方式を改善するアップデートを実施
  • 2026年6月4日 この事象の影響を受けたと思われるユーザーからの最初の問い合わせ
  • 2026年6月7日 この事象の影響を受けたと思われるユーザーからの2件目の問い合わせ
  • 2026年6月16日 この事象の影響を受けたと思われるユーザーからの3件目の問い合わせ
  • 2026年6月17日 不具合の発生条件が判明、影響範囲の確認と不具合の修正を実施
  • 2026年6月18日 2つのアカウントにデータを保存しているユーザーへの対応として、アカウント統合プロセスの設計と実装を開始、これまでに問い合わせのあった3名については個別の復旧対応を実施
  • 2026年6月19日 影響を受けたすべてのユーザーへの連絡を開始
  • 2026年7月31日 すべてのユーザーの復旧を完了(一部、そのままを希望されたアカウントを除く)

本不具合の直接の要因は、Googleログインの際に、過去のGoogle認証基盤から提供されたGoogleの登録メールアドレスに大文字が含まれるユーザーについて、小文字化してデータ連携されるケースがあることに起因して、これらのユーザーをカーリルが別のユーザーとして認識してしまったことによるものです。

ご利用のみなさまに多大なご不便とご心配をおかけしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます。また、原因の究明にあたり、サポートチームにご協力いただきましたユーザーの皆様に感謝いたします。ご不明な点や、うまく復旧できない場合は、ログインした状態でお問合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

クラウドセキュリティに関する国際規格「ISO 27017」の認証を取得しました

カーリルでは、情報セキュリティ基本方針を策定し、提供するウェブサービスや社内の情報セキュリティの継続的な強化に取り組んでいます。2023年にISMS認証(ISO/IEC27001)を取得しましたが、この取り組みをさらに推進するため、クラウドセキュリティマネジメントの国際規格である「ISO/IEC 27017:2015」に基づくISMSクラウドセキュリティ認証を新たに取得しました。


なぜクラウドセキュリティ認証なのか

カーリルは全国の図書館と、そのユーザーをつなぐサービスです。「あの本、どこの図書館にある?」という検索の裏側では、全国の図書館システムと日々データをやりとりしています。ユーザーにとっても図書館にとっても「使えて当然」のサービスであり続けるためには、目に見えないセキュリティの積み重ねが欠かせません。

カーリルは、図書館蔵書検索サイトの運営や図書館業務向けに提供する、Unitrad APIの提供を通じて、クラウドサービスプロバイダとしての役割を担っています。同時に、Amazon Web Services・Google Cloud・さくらインターネットなどの複数のクラウドサービスを利用するカスタマーでもあります。ISO/IEC 27017認証の取得は、この 「提供する側」と「利用する側」の両面における責任範囲を明確にし、クラウド環境特有のセキュリティリスクに体系的に対応するためのものです。

クラウドセキュリティ基本方針の策定

認証取得にあたり、13項目からなるクラウドセキュリティ基本方針を策定しました。クラウドサービスの設計・実装、責任範囲の明確化、論理的隔離、アクセス制御、インシデント対応、プライバシー保護、データポータビリティなど、クラウド環境に特化したセキュリティ管理策を定めています。

セキュリティホワイトペーパーの公開

セキュリティホワイトペーパーを各サービスごとに公開しています。これは透明性のためだけでなく、図書館や自治体の担当者がカーリルの各種技術を導入するための検討を進めやすくします。

特に「カーリル 学校図書館支援プログラム」では、文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」への準拠確認が容易になり、大規模な自治体でも円滑な導入が可能となります。「このサービス、セキュリティ的に大丈夫ですか?」という問いに、きちんと答えられる状態を整えました。


ISO/IEC 27001に加えてISO/IEC27017認証を取得したことで、クラウドサービスとして連携する図書館に対しても、より高い水準のセキュリティを提供できる体制が整いました。

カーリルはこれからも、誰にも気づかれないくらい静かで高速に、そして確実に動き続けるインフラであるために、セキュリティへの取り組みを続けていきます。