現在、ChatGPT などのジェネレーティブAIを活用した新サービスが活発に提案されています。カーリルでは、ChatGPTと図書館が提供する一般的な蔵書検索サービスを連携させる方法について検討しました。
蔵書検索サポーターの実装
利用イメージを体験するために、カーリルでは学校図書館支援プログラム で提供している学校図書館向けの蔵書検索サービスにChatGPT(OpenAI API) を組み込み、「蔵書検索サポーター」を実装することにしました。例えば、ユーザーが検索キーワードにヒットする本がなかった場合に、別のキーワードを提案したり、自然文の質問から適切な検索キーワードを提案することを想定します。カーリルが提供する検索サービスもAPIでアクセスできるため、OpenAI APIと接続するプロセスは驚くほど簡単でした。
ChatGPTと直接チャットする場合との大きな違いは、個別の図書館の蔵書情報を回答のための情報源として扱ったり、AIの出力を蔵書データと掛け合わせてユーザーに提示できることです。言語モデルはGPT-4を採用しました。
チャットによる検索キーワードの提案(実画面)
この取り組みは初歩的なものであり、さまざまなシチュエーションに最適化されているわけではありません。また簡易的な実装であるため、応答時間も少し長くかかります。しかし、蔵書検索サービスとチャットAIが協調して検索行動をある程度サポートすることができるようになりました。学校図書館支援プログラムのデモデータを対象にした「蔵書検索サポーター」のデモページを公開 しますので、実際の動作を体験することができます。
デモページ
実証実験について
OpenAIが提供するAPIは利用量に応じた従量課金です。そのため、大規模な投資が不要であり、各図書館が運用する小規模な検索サービスでもAIが活用可能です。もちろん、会話情報をOpenAIに送信する必要があるため、個人情報の保護については十分な配慮が必要ですし、AIの回答には誤りが含まれる場合があるため、それを前提としたユーザー体験が求められます。カーリルでは、今後、蔵書データを事前にベクトル化するなど、一般的なChatGPTとのインテグレーションを蔵書検索サービスに適用してみる予定です。
今後は図書館のウェブサービスにおいても、汎用AIの活用が活発化することが予想されます。それに先立って、課題や可能性、またプライバシーポリシーの定義などについての議論を深めるため、また運用にかかるコストを検証するため、カーリルでは、この簡易的な検索サポーター機能の実証実験(図書館の検索サービスへの組み込み実験)を実施することにしました。
実証実験にかかる費用はすべてカーリルが負担します。一般公開することもできますし、限定的な公開にとどめることもできます。カーリル学校図書館支援プログラムを導入している学校図書館や公民館図書室では、すぐにサービスの立ち上げが可能です。それ以外の図書館では、簡易的な書誌データをCSVなどで提供いただくことにより、サービスを立ち上げます。
蔵書数、図書館の種類、図書館の規模は問いません。
この実験に協力いただける図書館や、興味のある図書館の方は、カーリルにお問い合わせください。 実施方法については個別に調整します。ご希望いただいたすべての図書館にはサービスが提供できない可能性もありますので、あらかじめご容赦ください。
フィードバックを集約した上で、レポートを公開する予定です。
想定を上回るお問い合わせをいただきましたので、実証実験に関する新規の受付を終了します。ご協力ありがとうございます。なお、お問い合わせいただいた図書館には順次ご案内いたします。 (2023年4月10日追記)
ChatGPT Pluginsによる連携について
多数ご要望いただいております、「ChatGPT Plugins」 によるカーリル図書館API とChatGPTとの統合については現在、技術的な可能性を検討中です。