AIと図書館をつなぐ「カーリル for AI」の運用を開始します

全国7,400館以上を対象に、AIアシスタントから蔵書検索できる新サービスを開始します。

日本最大の図書館蔵書検索サイト「カーリル」を運営する株式会社カーリル(所在地:岐阜県中津川市、代表取締役:吉本龍司)は、ClaudeやChatGPTなどのAIアシスタントから、全国の図書館の蔵書を直接検索できる新サービス「カーリル for AI(カーリル図書館MCP)」(https://calil.jp/ai/ )のベータ版提供を2025年10月9日から開始します。

カーリルMCPのシステム構成

サービス開発の背景

生成AIの普及により、人々の情報探索行動は大きく変化しています。特にプログラミングの世界では、AIアシスタントを活用したコーディングが標準的な手法となり、開発効率が劇的に向上しました。

一方で、図書館分野においてはAI活用がほとんど進んでおらず、大きな可能性が眠ったままの状態です。 ユーザーの利用体験においても、図書館業務においても、図書館データとAIの統合は新しい価値を生み出せるはずです。特に、専門的な判断と知識を要する司書業務では、AIとの協働により大きな効率化が期待できます。問題は、そのための基礎的な環境が整備されておらず、トライアルを重ねる機会すら限られていることです。

これまで図書館サービスとAIとの統合は、予算に恵まれた一握りの図書館のものでした。さらにユーザーはそこに参加することさえできませんでした。カーリルは、規模や館種を問わず全国の図書館と連携できる検索インフラを日々整備しています。この既存のインフラとAI技術を統合することで、規模や予算に関わらず、すべてのユーザーと全国の図書館がAI時代の恩恵を受けられる環境を、いち早く実現できると考えました。

「カーリル for AI(カーリル図書館MCP)」の特長

「カーリル for AI」は、AIから利用できる図書館サービスという新しい体験を提供するための総合的な取り組みです。今回提供を開始する「カーリル図書館MCP」は、その第一歩として、Model Context Protocolを採用した図書館蔵書検索サービスです。

1. 標準規格による主要AIサービスとの連携

Model Context Protocol(MCP)という標準規格に対応することで、Claude、ChatGPTなど主要なAIアシスタントから統一的な方法でアクセスできます。2025年6月に規格化されたリモートMCP方式でカーリルアカウントと連携するため、アプリケーションの追加インストールも不要です。

※現在、Claude.ai(ウェブ版)、Claude Desktop、ChatGPT(Plus、Pro)、VS Codeなどで動作を確認しています。当サービスの利用にあたっては別途AIアシスタントサービスを準備する必要があります。

💡 Model Context Protocol(MCP、モデル・コンテキスト・プロトコル)は、2024年11月にAnthropicが発表した、AIアシスタント(AIエージェント)と他のシステムを双方向接続するためのオープンな標準規格です

2. 充実した検索機能

フリーワード検索はもちろん、書名・著者名・出版者・出版年・NDC(日本十進分類法)など、一般的な図書館システムがサポートする検索条件に対応しています。AI側では検索結果を見ながら自律的に検索条件を変更したり、複数の図書館のデータを比較検討することができます。

3. 全国規模での即時対応

各図書館のシステムに追加の実装をすることなく、全国規模でのサービス提供を実現しました。現在、カーリルが対応する7,400館のうち、公共図書館(対応率98%*1)と一部の大学図書館をサポートしており、年度内にすべての図書館への展開を予定しています。

【2025年10月20日追記】 年度内の展開を予定していましたが、2025年10月20日よりカーリルが対応するほぼすべての大学図書館および専門図書館での連携を開始しました。公共図書館(対応率98%)と合わせ、全国7,400館以上の図書館をAIから検索できる環境が整いました。

*1 日本図書館協会『日本の図書館 統計・要覧2024』における公共図書館数総計に対するカーリルのカテゴリ(県立図書館・市町村立図書館)の対応率

4. ベータ版の無償提供

当面の間、ベータ版として無償で提供します。公平制御のためユーザー単位でのアクセスレートに制限を設けます。この制限は利用状況により随時調整します。

利用イメージ

蔵書検索
「中学生向けのSDGsに関する本を名古屋市の図書館で探して」といった自然な問いかけで、本を提案する

展示コーナーの企画支援
蔵書検索しながらテーマに沿った本のリストを自動生成し、図書館での展示企画の土台を作成する

選書方針に基づく蔵書評価
図書館が策定した選書基準をもとに所蔵情報を確認して分析、選書や除籍を効率化する

  • レファレンス
    利用者からの質問に対して、関連する蔵書を素早く検索し、回答を補強する 
  • 授業準備の支援
    「中学生の社会科で使える、環境問題についてのわかりやすい資料を探して」といった授業準備のニーズに対応する

AIの回答には誤りも含まれるため、結果を適切に検証できる専門知識を持つ方による利用が効果的です。ベータ版の提供を通じて、想定外の活用事例や改善すべき課題を発見し、サービスの質を高めていきます。

新しいビジネスモデルへの挑戦

カーリルはこれまで、アフィリエイトと広告収益で、無償のウェブサービスを維持してきました。しかしAI時代、この前提は崩れつつあります。ユーザーは検索結果ページを直接訪れなくなり、ウェブページへのアクセスは減少が見込まれます。実際、コンテンツ連動型広告の収益性は、ここ数年で顕著に低下しており、広告の品質も低下しました。広告に依存しないサービスモデルへの転換はもはや不可欠です。

MCPによってAIと図書館が連携できるようになれば、ユーザーはカーリルにアクセスすることなくシームレスに図書館の情報資源にアクセスできるようになります。それこそが私たちの理想です。しかし、その実現には持続可能なビジネスモデルを確立する必要があります。

難しい挑戦ですが、目指す姿は明確です。すべての個人ユーザーが無償で使い続けられることを前提に、サービスを応援したい方が任意で支援できる仕組みを検討しています。図書館総合展をはじめ、様々な場で皆様のご意見を伺いながら、新しい「費用負担モデル」の実現を目指します。

図書館総合展のご案内

10月22日(水)〜10月24日(金)の3日間、パシフィコ横浜で開催される国内最大の図書館イベント「図書館総合展」に、カーリルが出展します。全国の図書館関係者、自治体、教育機関、システム開発者、そして図書館に関心のある一般の方々が集うこの展示会で、「カーリル for AI」を直接体験していただけます。開発担当者が常駐し、技術的な質問から今後の展望まで、何でもお答えします。(詳しくはこちら

参考情報

(2025年10月現在、カーリル調べ)

  • 国内外の主要な図書館蔵書検索サービスにおいて、外部AIアシスタントから直接利用できる公式の環境は提供されていません。カーリルの取り組みは、全国規模の図書館サービスとして標準プロトコルによるAI統合を実現する、世界的にも先駆的な取り組みとなります
  • 2025年のCode4Lib Japanカンファレンスでは、MCPを使ってAIを既存の公開APIに接続する取り組みが多数報告されました。カーリルや国立国会図書館、国立情報学研究所が提供する既存のAPIを活用し、個人環境でローカルMCPサーバーを構築する事例も見られます
  • カーリルは2010年のサービス開始以来、図書館APIを無償で提供し、多数のアプリケーション・サービスとの連携実績があります
  • 2016年リリースの図書館業務向け「カーリル Unitrad API」は、全国の都道府県立図書館が提供する広域横断検索サービスにおいて50%以上の自治体で採用されており、図書館業務での活用も広がっています
  • 2023年3月、業界に先駆けてChatGPTを活用した蔵書検索サポーターの実証実験を実施しました
  • 今回のMCP対応は、これらの技術的蓄積と全国規模での運用実績を基盤としています

お問い合わせ

株式会社カーリル
岐阜県中津川市坂下1645-15

contact@calil.jp  電話 0573-67-8105

※図書館総合展会場での取材にも対応します。取材希望の方は、ウェブフォームまでお知らせください。

※質疑応答や、実際の使い方を解説する「カーリル for AI チュートリアル」を10月15日(水)13:30~14:30にオンラインで開催します。参加希望の方はフォームからお申込みください。

詳しい設定方法は https://calil.jp/ai/ で確認できます。

より安全なログイン方法「パスキー(Passkey)」に対応しました

カーリルをご利用いただきありがとうございます。カーリルでは、より安全なログイン方法「パスキー(Passkey)」を導入しました。従来サポートされている外部アカウント連携によるログインに加えて、パスキーを設定いただくことで、連携サービスでログインできなくなった場合でも安全にカーリルにログインできるようになります。

カーリルのログイン画面

パスキーとは?

パスキーは、従来のパスワードに代わる、新しい認証技術です。従来のパスワードは、強力なものであっても第三者に流出したり、忘れてしまったりするリスクがありますが、パスキーはそのようなリスクを大幅に軽減します。パスキーは、デバイスに保存された暗号鍵を利用して認証を行うため、第三者にログイン情報が漏洩するリスクが低く、より安全にご利用いただけます。また、パスキーは生体認証(指紋認証や顔認証など)やデバイスのPINを利用するため、パスワードを覚えておく必要がなく、スムーズにログインすることができます。

カーリルでのパスキー利用方法(PCの場合)

1. カーリルのトップページにアクセスします
2. 従来のログイン方法でカーリルにログインします(すでにログインしている場合は不要です)
3. 右上の設定メニューから「アカウント設定」をクリック
4. 左メニューから「パスキーの設定」ページを開きます
5. 「新しくパスキーを設定」ボタンをクリックしてください

カーリルでのパスキー利用方法(スマートフォンの場合)

1. カーリルのトップページにアクセスします
2. 従来のログイン方法でカーリルにログインします(すでにログインしている場合は不要です)
3. 左上のメニューボタンから、「アカウント設定」を開きます
4. ページ下部のメニューから「パスキーの設定」ページを開きます
5. 「新しくパスキーを設定」ボタンをクリックしてください

スマートフォンでのパスキー登録例

利用にあたっての制限

  • パスキーの登録には、パスキーに対応したOSやデバイス、ブラウザが必要となります。
  • 新規登録時は、引き続き外部アカウント連携によるログインのみがご利用いただけます。これはスパムアカウントを抑制しカーリルの運用コストを低減するための制約です。
  • 1つのカーリルアカウントに登録できるパスキーは最大10個です。

書店在庫情報プロジェクトの実証実験を開始します

カーリルでは、出版文化産業振興財団(JPIC)および版元ドットコムと共同で「書店在庫情報プロジェクト」を推進しています。このプロジェクトでは、全国の書店在庫情報を統合することで、様々なサイトやアプリから近隣で購入可能な店舗を簡単に探せるようにすることを目指しています。本日から、カーリルの書誌個別ページからも、「近くの書店在庫を調べる」のリンクをクリックすることで、書店の在庫情報を確認することができます。

現時点では、一部の店舗との連携となりますが、今後多くの書店等に賛同いただき連携店舗の拡大を目指します。このサービスについて詳しくは、書店在庫情報プロジェクトのウェブサイトをご確認ください。

カーリルからの遷移方法
在庫確認画面のイメージ

関連情報

ChatGPTを活用した蔵書検索サポーターの実証実験を開始します

カーリルでは、ChatGPTを活用した「蔵書検索サポーター」を実装し実証実験への協力図書館を募集しました。ユーザーが検索キーワードにヒットする本がなかった場合に、ChatGPTを活用して、自然文の質問から適切な検索キーワードを提案することを想定しています。実際の図書館の蔵書検索と連携することで、その図書館の蔵書にあわせたキーワード提案を実現します。

実証実験の実施に向けて各図書館との調整を進めてまいりましたが、この度、準備が整いましたので発表いたします。8月以降に順次サービスを立ち上げ予定です。実証実験による検索サービスを一般公開するかどうかは、各図書館の運用により異なります。今後、10月を目途にフィードバックをとりまとめてレポートを発表する予定です。ご協力いただく図書館は以下の通りです。北海道から沖縄まで、さまざまな規模の図書館にご協力いただくことになりました。

  • 中札内村図書館(北海道) X投稿
  • 埼玉県立図書館
  • 埼玉県立飯能高校図書館
  • 新名学園旭丘高等学校図書館(神奈川県)
  • 県立長野図書館
  • 京都府立丹後緑風高校久美浜学舎図書館
  • 沖縄工業高等専門学校図書館

仮想的な蔵書情報によるデモサイトは引き続きご利用いただけます。

今後、各図書館の判断にて実証実験が一般公開される場合には、このページでもURLをお知らせします。発表に含まれる図書館以外にも、多くの図書館に実証実験への協力を検討いただき感謝しています。カーリルでは、引き続き「図書館をもっと楽しく。」をミッションとして、図書館に関わる技術開発に取り組みます。

「openBD API(バージョン1)」の終了によるカーリルへの影響について

カーリルでは、書誌・書影情報の自由な流通を目指して、出版社団体である版元ドットコムと共同でopenBDプロジェクトを推進してきました。このプロジェクトでは、出版社団体である版元ドットコムの会員社が提供する書誌データだけではなく、版元ドットコムが受信している、出版情報登録センター(JPRO)のデータを含めることで、網羅率の高い書誌・書影情報の配信が実現しました。カーリルは、配信インフラの運用を担ってきました。

2023年6月5日から、JPROから版元ドットコムへのデータ配信が停止され、openBDのデータ更新に遅延が発生しておりました。その後、版元ドットコムにおいてJPROとの協議が継続しておりました。この間、版元ドットコムとカーリルでは緊密に連携して対応を検討してきましたが、最終的に、現状スキームによるオープンな書誌・書影情報の提供継続は困難と判断しました。2023年7月25日、openBDプロジェクトから、「openBD API(バージョン1)」の提供終了について とのお知らせが公表されました。

カーリルでは代替APIの設計など、バージョン1の提供終了がopenBDに依存しているプロジェクトにとって最小の影響となるよう努力します。カーリルでは、図書館および出版情報のパブリックインフラを担う覚悟をもって、引き続き書誌・書影情報の自由な流通を目指すとともに、版元ドットコムとの共同事業に取り組みます。

なお、openBDの提供するAPIは、カーリルの各種ウェブサービスでも幅広く活用されています。カーリルが提供する検索サービスには、多様な情報源を組み合わせているため、ただちに影響はありませんが、書影や詳細な書誌情報(内容紹介や目次など)の提供に影響が出る可能性があります。現在、この影響を最小限とするため、カーリルとしてもJPROとの協議を申し込んでいます。

影響が懸念されるサービス

  • カーリル
    ・書影の網羅率が低下します
    ・本の個別ページに掲載している、内容紹介や目次情報の提供ができなくなります
    ・近刊情報(未発売)の本が検索結果に表示されなくなります
  • カーリル学校図書館支援プログラム
    ・検索サービス内での書影の網羅率が低下します(従来からGoogle Booksとも連携しているため、Google Booksに書影がある場合は引き続き表示されます)
    ・内容紹介や目次情報の提供ができなくなります
    ・国立国会図書館が提供する書影APIとの連携を検討しています
  • カーリル ブックウォーク
    ・サービスを終了します
  • カーリル Unitrad API
    ・新刊リクエスト等で連携している近刊情報はNDLサーチのAPIと連携しており影響はありません
    ・なおAPIを活用したユーザーインターフェース上で表示している書影がopenBDの場合は網羅率が低下します

関連情報

「openBD API(バージョン1)」の提供終了について