大人の職場体験!カーリルが司書さんのお仕事を体験してきました

図書館で「大人の職場体験」なるものが開催されると聞いて、黙ってはいられません!
司書さんの仕事の一端を実際に体験してきました。

7月29日、お邪魔したのは東京都の葛飾区立立石図書館

2011年6月末にリニューアル開館した図書館で新しく、晴天も手伝ってとても明るい雰囲気です。

正面玄関を入って右手には図書館のカウンターと雑誌コーナー、左手には総合受付と喫茶コーナーがあります。ケーキおいしそうだった。。
今回の職場体験の会場は2階研修室。
看板を見ると期待が高まります。
受付を済ませると、いよいよ職場体験のスタートです。
まずは講義から。
お話をしてくださったのは、司書の岡さん。
15~16世紀頃の西洋の図書館では、本棚は鍵付きだったそうです。
勝手な持ち出しや、場所の移動を禁止するためだったとか。
教会の図書室も、地域の人が見に来ると棚から本を取ってくれと言われてしまうため、本棚にカバーを書けて見えなくしてしまったそう。
しかし、本を並べているだけで利用しないのであれば、図書館の意味がありません。
「図書館は利用するためのものである」
図書館学の父・ランガナタンが経験した事例を、参加者は熱心に聞いていました。
そして、この後体験する配架作業(本を棚に戻す作業)のために、「請求記号」の見方を勉強しました。本の背表紙についているアレです。
上段が「分類記号」(*1)、下段が「著者記号」の二段組みになっています。
一般的な請求記号の他にも、立石図書館独自の分類をし、カラーテープや犬のイラストを貼ってある本もあるとのこと。図書館の特色が出ていて面白いですね。
一通りの分類の説明を受けたところで、早速お仕事体験開始です!
配架と保護フィルムシート貼りの2班に分かれて作業をします。

まずは配架のお手伝いから。

カウンターの横に、本日返却された本が並べてあります。
ここから2~3冊を手に取り、請求記号を見ながら本棚に戻していきます。
小説などが置いてある棚。
立石図書館では、913(日本の小説)と914(日本のエッセイ)を、著者毎に一緒に並べているとのこと。 間違えないようにしなければ。
中高生向けのYA(ヤングアダルト)コーナーは、その中に全てのジャンルがあり、分類毎に並んでいるため難易度が高い、と岡さん。
ここでご紹介した配架は立石図書館のものです。

それぞれの図書館によって独自の分類をしているところがきっとあるはず。

同じ本でも図書館によっては異なるジャンルに分類されていることがあるので、いつも通っているお気に入り図書館での分類がどうなっているか、一度じっくり見てみると面白いかもしれませんよ。

さて、30分程で配架が終了し、次は本への保護フィルムシート貼り体験です。

保護フィルムシートを貼るのは、本の汚破損を軽減するのが目的。
少しでも長く多くの人に読んでもらうためです、と館長の玉川さん。
テーブルごとに講師の司書さんに手順を教えてもらいます。
まずは、本が中心に来るように保護フィルムシートを置き、位置を決めます。
位置が決まったら、本の形に合わせてシートにしっかり折り目を付けます。 
しっかり折り目が付いたら、台紙からシートを折り目の辺りまで剥がします。 
折り目の端と本の端を合わせて、1~2cm程度慎重に貼り付けます。 
次に、本の角に向かってシートに斜めに切り込みを入れます。
直角にしてしまうと、本からはみ出てしまうことがあるので、内側に入りきるくらいが目安です。
切り取るとこんな感じ。見えるかな?
この切り取ったシートの端っこはあとで使うので取っておきます。
今度は表紙にシートを貼っていきます。
長い定規を使って、空気が入らないように、でも引っ張りすぎないように慎重に。。
背表紙の辺りまで貼り付けたら、背表紙の方に向けてシートに斜めに切れ込みを入れます。
切れ込みの位置が、背表紙ぎりぎりにならないように、少し内側に向けて切ります。
裏側にも同様にシートを貼り付け背表紙に切れ込みを入れます。
上下とも切れ込みを入れたら、本のカバーを外し、背表紙部分のシートを内側に折り込みます。
これで棚から本を取り出すときに、カバーが破れるのを防げますね。
本に カバーを掛け、上下の貼っていないシートを折り込んで貼っていきます。
歪み防止のため、2番目に貼るのは最初の箇所の対角線上に。
こうするときれいに仕上がるのだそうです。
全てを貼り終えたら、空気が入ってしまったところに穴をあけ、空気を抜きます。
最後に、先ほど切り取ったシートの切れ端を、表紙裏の破れやすいところに貼って完成! 
一連の工程を5分もかからず、パパッと説明してくださいました。
(因みにこれは一例で、司書さんによっては先に全部貼ってから切る人、切ってから貼る人など、それぞれにやりやすい方法があるのだそうです。)
やり方がわかったところで、いざ、保護フィルムシートかけ!
事前に、一人一冊、カバーをかけたい本を用意するように言われており、各々持参した本を手に、慎重に作業に取り掛かります。
わからない部分は司書さんに聞きながら。
私はミヒャエル・エンデの「鏡のなかの鏡-迷宮-」を持ってきました。
さあ張り切っていきましょー!
・・・と、いきなり順番を間違えました。
貼る前に切ってしまって、 しかもシートの裏表がわからなくなってしまい助けて頂くことに。
何とか貼ることはできたものの、引っ張りすぎて表紙が閉じなくなってしまいました。完全に失敗です。。
もはや自分ではどうしようもないので、何とか直して頂きました。
そして、出来上がりがこちら。
一度切って補修してあるため、裏表紙がかわいそうなことに。
最後まで気を抜かず、もっと丁寧に仕上げるべきでした。エンデさんごめんなさい。
うまくできるとこんな感じになります。笑顔も素敵!
プロがやると簡単そうに見えることも、やっぱり素人には難しいですね。実際に体験して、改めて実感しました。
とはいえ、(失敗したけど)とっても楽しかったです♪
今回は参加者13名。東京都外の方もいらっしゃったとか。
それだけ図書館の仕事が魅力的ということですね。
尚、次回の「大人の職場体験」開催予定は未定とのこと。
好評であれば、また企画したいとのことでしたので、ぜひ第2回を期待したいですね。
司書さん体験をしてみたい大人の皆さん、お近くの図書館でも持ち込み企画してみると、もしかしたら実現するかもしれませんよ。
(杉山@カーリル
<参考>

「2012大学読書人大賞贈賞式」に行ってきました

活字好きの若者による、活字好きの若者のための年に一度の本のお祭りが「大学読書人大賞」です。

4月の公開討論会で『ハーモニー』が大賞に決定し、6月7日の贈賞式では著者の故・伊藤計劃さんのご両親に大賞が贈られました。
⇒ その他の候補作をカーリルで検索。

会場の入り口には大賞候補作が並び、参加者を迎えます。

贈賞式では、大賞作品を推薦した中央大学の佐貫さんにも表彰状が渡されました。

もっと伊藤さんの作品を読みたかった。伊藤さんが伝えたかったものを自分たちが受け継いで形にしていきたい、とコメントを述べました。

因みに、賞状の文面には今回のエントリー作品すべてのタイトルが盛り込まれています。

「あなたは図書をめぐるビブリア戦争を勝ち抜き青年のための最優秀読書人賞に輝きました。その愛ははしたなき扱いを受けるかもしれませんが それでも無垢に作品とのハーモニーを奏で続けて下さい」

読み上げられると、会場から笑いが起こりました。


(中央大学・佐貫さん)

そして、伊藤計劃さんのご両親へ大賞が贈られました。
贈賞式当日の6月7日はお父様の誕生日とのことで、息子からの誕生日プレゼントかもしれないとおっしゃっていました。

質疑応答には、担当編集の塩澤さんが対応。
生前『ハーモニー』が完成した際、「これは小説なのかな」と伊藤さんがつぶやいたという逸話も出ました。小説というより、伊藤さんの生の声に近いのではないかと感じたそうです。

今年で5回目を迎えた大学読書人大賞。
運営側の学生さんが毎年入れ替わっていても、参加サークルも増え、どんどんレベルが上がっているそうです。

「近頃の若い者は本を読まない!」・・・なんてことありません。

一作品を読み込み、推薦文を読み込み、討論する。
その過程で作品への理解は深まり、仲間とともに読書を楽しんでいるのではないでしょうか。

大賞に参加していない大学生の皆さんも、大学生以外の皆さんも、ぜひ大学生オススメの本を手に取ってみてください。

(取材:杉山@カーリル

<関連リンク>
最終候補作をまとめて検索☆ → 2012大学読書人大賞のレシピ
2012大学読書人大賞が決定!(カーリルのブログ)
大学読書人大賞公式ウェブサイト
2011大学読書人大賞

図書館を活用して、金環日食を楽しもう!

5月21日が何の日かは、言わなくても多くの方がご存じのはず。
そう、今話題の「金環日食」が見られる日です。
皆さん、もう観察の準備はしていますか?

カーリルで、各地の図書館で行われる金環日食に関するイベントや展示を調べてみました。
◇金環日食を観察する◇
中学校の校庭で金環日食を観察。講師による講座も。
天文同好会との共催。事前レクチャーと観望会、写真や図書の展示。
◇金環日食について調べる・学ぶ◇
金環日食講座:楽しみ方、注意点などを学ぶ
金環日食や天体についてのテーマ展示
この他にも、お近くの図書館でイベントがあるかもしれません。
ぜひチェックして、この珍しい金環日食に備えてみませんか?
<関連リンク>

ゴールデンウィークも図書館で楽しもう! 全国の図書館のイベント情報☆

今週末から長い連休に入る方も多いのではないでしょうか。
皆さん、ゴールデンウィークの予定はもうお決まりですか?

図書館では様々な催し物を開催しています。
カーリルで、ゴールデンウィーク中の都道府県立図書館のイベントを集めてみました。
気になるものがないかチェックしてみてください☆

<北海道・東北>
▽北海道立図書館
5月3日 子ども向け図書館ツアー2012「図書館の秘密を探る」
▽青森県立図書館
~4月25日 東日本大震災関連テーマ展示「震災に学ぶ ~未来につなぐ記憶と記録~」
▽岩手県立図書館
~6月10日 企画展「復興の先覚者・後藤新平 ~いわて復興偉人伝~」
▽秋田県立図書館
~5月20日 展示「安野光雅絵本展」に関する安野光雅特設コーナー
▽宮城県図書館
~8月31日 特別展「絆の証し-東日本大震災文庫展-」
▽山形県立図書館
~5月13日 こどもの読書週間企画展「出発! のりものの絵本」
▽福島県立図書館
~5月下旬 3.11からの8784時間~そして これから~

<関東>
▽茨城県立図書館
5月5日 イベント「子ども読書フェスティバル」
▽栃木県立図書館
企画展示「地震・雷・火事・オカン~あなたのおうちは大丈夫?」等
▽群馬県立図書館
~6月24日 資料展示「東国の都-群馬」
▽埼玉県立久喜図書館
4月28日 子ども読書の日記念「おおきなおはなし会」
▽埼玉県立浦和図書館
5月3日 名画シアター「ブタがいた教室」
▽埼玉県立熊谷図書館
~5月24日 企画展「中世の歴史書に見る平清盛と源平合戦」
▽千葉県立中央図書館
~6月14日 展示「『古事記』編纂1300年~千葉県立図書館の古事記たち~」
▽千葉県立西部図書館
~6月14日 展示「和算 -江戸時代の数学-」
▽東京都立中央図書館
~5月13日 企画展示「新ビジネスマン、本を読もう!―ゴールデンウィークは図書館へ―」
▽東京都立多摩図書館
4月28日 ミニシアター「鉄道員」
▽神奈川県立図書館
~5月9日 展示「須賀田礒太郎  3つの物語-作曲家と楽譜と音楽と-」
▽神奈川県立川崎図書館
4月28日 ミニ展示関連講演会「イグ・ノーベル賞受賞者が語る 香りが変える未来社会」

<甲信越・北陸>
▽新潟県立図書館
5月11日 こども図書室イベント「絵本と工作を楽しもう!」
▽県立長野図書館
児童室テーマ展示「元気いっぱい、男の子!」
▽山梨県立図書館
~5月30日 ロビー企画展「こどもにすすめたい本2012」
▽富山県立図書館
~5月6日 展示「本からきこえる音楽」
▽石川県立図書館
~5月30日 第54回こどもの読書週間記念展示「グリムの世界へようこそ!―グリム童話誕生200年―」
▽福井県立図書館
5月3日 大人も挑戦!漢字ゲームと古代文字デザインクリアファイル作り

<東海>
▽静岡県立中央図書館
~5月30日 パネル展示「わが母の記」
▽愛知県図書館
~5月9日 写真展「震災と図書館」
▽岐阜県図書館
~10月14日 ミナモがいっぱい「ぎふ清流国体」展示
▽三重県立図書館
~5月12日 イベント「みえの創業・経営応援フェア」

<関西>
▽大阪府立中央図書館
~7月1日 資料展示「しかけ絵本あれこれ‐かわりだね絵本コレクション」
▽大阪府立中之島図書館
5月11日〜6月13日 展示・講演・投票イベント「みんなで選ぶ社史グランプリ」
▽京都府立図書館
~6月27日 小展示と図書コーナー「六勝寺 and 崇徳院」
▽滋賀県立図書館
ミニ展示「探訪 滋賀の美」他
▽兵庫県立図書館
~5月16日 展示「兵庫ゆかりのコーナー」ひょうごの祈りと美
▽奈良県立図書情報館
~5月13日 図書展示 こどもの読書週間標語:君と未来をつなぐ本 「明日(あした)が見える」
▽和歌山県立図書館
~25年3月31日 特別展示『小学校国語の教科書で紹介されている本』

<中国>
▽鳥取県立図書館
〜5月12日 「こどもの読書週間行事」
▽島根県立図書館
館内資料展示「日本の子どもの本復刻資料展-明治・大正・昭和」
▽岡山県立図書館
4月21日 ヨムヨムおはなしまつり’12 ~味わおう!空の下で楽しいおはなし~
▽広島県立図書館
4月28日 「ひろしまおはなしの旅おはなし会」
▽山口県立山口図書館
5月6日 イベント「かがくであ・そ・ぼ! ~電気と磁気の不思議な関係~」

<四国>
▽香川県立図書館
~5月12日までの土曜日 こども読書まつり
▽徳島県立図書館
~6月3日 展示「絵本を訪ねて旅に出よう!」
▽愛媛県立図書館
5月5日 春のたっぷりおはなし会
▽高知県立図書館
~4月26日 企画展「こんなお金があったらいいなコンテスト2012」

<九州>
▽福岡県立図書館
~5月5日 「北朝鮮という国」特集
▽佐賀県立図書館
5月5日 「子ども読書まつり」
▽長崎県立長崎図書館
~6月10日 県立長崎図書館創立100周年記念企画 平成24年度長崎ゆかりの文学展第1回企画展「長崎の文学碑 ~万葉から現代まで~」
▽大分県立図書館
「もっと美術を![移動]県美展」
▽熊本県立図書館
~6月18日 熊本近代文学館企画展「俳句書簡に見る正岡子規の教え」
▽宮崎県立図書館
5月3日 平成24年度 第1回緑陰コンサート
▽鹿児島県立図書館
~4月30日 4月のミニ展示「春、一歩を踏み出す一冊」
▽鹿児島県立奄美図書館
4月【2F一般閲覧室の設営】テーマ:「日本の武将」
▽沖縄県立図書館
~5月7日 こどもの読書週間・特別展示会「触れてみよう!ひと昔前の子どもの本」

この他にも、市区町村立図書館などでもイベントは盛りだくさん。
ぜひ、近くの図書館に足を運んでみてくださいね。

2012大学読書人大賞が決定!

大学生の、大学生による、今若者に一番読んでほしい本を決める「大学読書人大賞」。
2012年の大賞を決定する公開討論会が、4月21日(日)に行われました。
日本に数ある文学賞の中でも、一般読者によって選ばれるのはこの「大学読書人大賞」だけ。
その文学のお祭りに、今年もカーリルが取材に行って来ました。

(大賞候補作一覧や、候補作決定までの流れはレシピ「2012大学読書人大賞」をご覧ください)

今年の公開討論会会場は、千代田区立日比谷図書文化館です。
日比谷公園の中にあるこの図書館、上から見ると建物が三角形。
建設予定地が三角形だったから、自然と三角形の建物になったんだとか。

運営は全て大学生の手によって行われており、図書館の入り口では委員の学生さんが出迎えてくれます。

図書館に入って正面の階段を下りると、会場の大ホール。
観覧者は受付を済ませて中に入ります。

受付には、大賞候補作がずらり。

討論会は、推薦者からのプレゼンテーションの後、登壇者全員での討論が行われます。
以下、推薦書と推薦文、簡単な討論の内容をご紹介します。

推薦書『馬たちよ、それでも光は無垢で
推薦文「タイムマシン的書籍として」by 法政大学もの書き同盟 古味祥吾さん

「この作品に面白さがあるか」それを問われたならば、私は「貴方は一体何をもって本を面白いと判断しているのか」と一昼夜を通して聞き出さなければならないだろう。

東日本大震災について小説という形で読む意味があるのか、震災の訳のわからなさが100%表現できているのか等、震災の体験に焦点を当てた議論が展開されました。

推薦書『青年のための読書クラブ
推薦文「全ての「私たち」に贈る」by 京都府立大学文藝部 井上大地さん

『青年のための読書クラブ』――この作品が描いているのは、まさに「私たち」である。過去に「そうであった」私たちであり、「そうありたかった」私たち、もしくはこの先「こうあるかもしれない」私たちである。

誰にでもあるかもしれない”黒歴史”を追体験する必要があるのか、今この大学生のときに振り返る意味は何か等、笑いを交えながら厳しい意見が交わされました。

推薦書『天帝のはしたなき果実
推薦文「向き合うことについて」by 関西大学現代文学研究部 和田晃さん

まず、想像してもらいたい。貴方に親友がいたとする。そして貴方はその人のことなら何でもわかっていて、何から何まで知っている。さらに、相手も自分のことを100%理解してくれている。そういう想像を。

真剣にわかろう、わかり合おうとする事が大切だと思う、しかし読みにくい文体でこの長い物語を読み切るのは難しいのではないか等、いかにこの本を読みきるのかに焦点を当てた討論が行われました。

推薦書『図書館戦争
推薦文「図書館戦争(笑)」by 立教大学文芸批評研究会 藤掛伸さん

はじめに、図書館で戦争をしているという状況を考えてみよう。無数の棚に本たちが静かに並び、そして市民が静かに本を読む空間である図書館。そんな図書館という空間だけが、平和なこの日本の中で唯一戦場になる――これだけならギャグである。

本が嫌いな人にも本を巡る戦いの話を薦めるのはなぜか、マクロの視点とミクロの視点はどちらが大切で必要なのか等、現代社会をどう見るのかという方法論も提示されました。

推薦書『ハーモニー
推薦文「伊藤計劃という「視点」」by 中央大学文学会 佐貫裕剛さん

あなたには、憧れの作家がいるだろうか。魂の中枢に刻み込まれた、座右の書があるだろうか。私にはある。伊藤計劃と、彼の遺したその作品群だ。

この作品は一般に「現在」について書かれたSFだとはみなされないのではないか、なぜ今、3.11の前に亡くなった作家の作品なのか等、”今”をキーワードとしてそれぞれの見解が示されました。

推薦書『ビブリア古書堂の事件手帖
推薦文「全ての本好きに捧ぐ。」by 大東文化大学國文學研究会 中村嘉音さん

古い本には中身としての物語だけではなく、本そのものの物語がある。活字が全く読めない五浦大輔は古書店の美人店主篠川栞子と出会う。そこから古書に纏わる物語が始まる。

本を読まない人に、たくさんの本が出てくる物語を薦める理由は何か、最後に出てくる「本好きじゃない人にはわからないから」という台詞に興ざめした等、本好きの学生ならではの意見が多く出されました。

全ての発表が終わった後は、観覧者も一緒になって議論が行われました。
会場からもたくさんの意見や疑問が出て、活発な意見交換がなされました。

そして、大賞の決定です。
登壇者が自分の推薦作品以外に得点をつけ、最高得点を獲得した作品が「大学読書人大賞」となります。

今年の最高得点は、著者への愛に溢れた論理的な発表が印象的だった『ハーモニー』が獲得、大賞に決定しました!

討論会のコーディネーターをなさった永江朗さんからは、震災後に、3.11を経験せず亡くなった作家の作品が選ばれた事には意味があるだろう。年々大学読書人大賞のレベルも上がっており、大変喜ばしく思う、という講評がありました。

大賞の推薦者、佐貫さんにお話を伺いました。

敬愛する伊藤計劃さんの作品が大賞に選ばれて本当に嬉しいです。
こんな作家がいたという事を、たくさんの方に覚えていてほしいと思います。とのことでした。

伊藤計劃さんの著書の中では、昨年度の大賞最終候補にあがっていた『虐殺器官』が一番好きなのだそうです。こちらも是非多くの方に読んでもらいたいとのこと。要チェックですね。

最後に、実行委員長の森希衣さんと副委員長の北虎大樹さんにお話を伺いました。

大役をやりきる事ができて、ほっとしています。やったー終わったー! という感じです(笑)
今年は推薦文も今までの3倍も集まりましたし、会場からもたくさん質問や意見が出て、とてもいい討論ができたと思います。
運営委員の出席率がなかなかあがらない等大変な事もありましたが、すばらしい大賞だと思うので、ぜひ文芸サークルの皆さんには、下の代にどんどん引き継いでもらいたいと思います。

 * * *

例年、受賞作の著者を招いて行われる贈賞式ですが、今年の大賞の伊藤計劃さんは既に物故者。どなたを招いてどのような式にするのか、実行委員の企画が楽しみですね。

贈賞式は6月の予定。
公開討論会に参加できなかった学生さんも、是非参加してみては?

<関連リンク>
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