図書館の検索画面にある「件名」のひみつに迫る



図書館の蔵書検索システムで「件名」という項目があるのをご存じですか。
個人件名や一般件名などいくつかに分かれていることもあります。

いったいこれ、どうやって使ったらいいのでしょうか。「件名」のひみつに迫るべく、図書館向けの書誌データベースを提供する図書館流通センターで、図書館に納める本の情報を整備している豊田さんにお話を伺いました。

「件名」って何ですか?

豊田:「件名」の前に、まず「書誌」についてご説明したいと思います。
書誌は、その本を探すための様々な情報のことです。タイトルや著者名、出版者、発行年等の基本的な情報の他にも、本の内容や分類、著者のプロフィール等があり、本によって情報の項目数は異なります。件名もこの中の項目のひとつです。


今のような情報検索システムが普及する以前は、目録カードがこの役割を果たしていました。若い人は目録カードを知らないかもしれません(笑)

−−目録カード知ってます! 以前図書館のカウンターの近くに置いてあった、小さいカードですよね。ずらーっと並んでるやつ。

豊田:そうです。あのカードに載っている情報が書誌です。現在ではもっと項目数も多く、詳しくなっています。コンピュータで検索できる書誌のことをMARCと言います。”MAchine Readable Cataloging”の略で、マークと読みます。
(MARCについてもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。)

−−なるほど。豊田さんはその書誌を整備する仕事をなさっているんですね。

豊田:はい。私は普段、発売前の本のMARCを作る部署で、「分類」と「件名」の作成を専門に担当しています。「分類」はその本がどの分野に属するかを示すもの、「件名」はその本が何について書かれたかを端的に表すものです。


例えば、お菓子の作り方だと件名は「菓子」、フェイスブックに関する本の件名は「ソーシャルネットワーキングサービス」となります。


本の内容をわかっていないと入力できないので、書誌を作る部署の中でも一番本について知っているかもしれません。

書誌には色々な項目があるみたいですが、「分類」と「件名」だけを担当しているんですか?

豊田:はい、分類と件名だけを毎日チェックしています。一日で数十冊の本をチェックすることになります。

分類と件名の他にも、各項目にはそれぞれのエキスパートがいます。タイトルや著者名、出版者、発行年等の基本的な情報を担当するグループ・著者調べを担当するグループなどに分かれて作業をしています。各担当がそれぞれの項目を入力し、それを様々な形でチェックして、ようやく1冊分のMARCが出来上がります。

MARCを作っている部署は、全部で100人くらいいて、分類と件名を担当する私の班は10人くらいです。
−−すごい人数ですね。ところで「件名」って、本のタイトルのことじゃなかったんですね。違いがよくわかってませんでした。



豊田:そう、別物なんです。メールだとsubject=件名を指すので、一般にはわかりにくいかもしれませんね(苦笑)


件名は、その本に何が書かれているかという主題を明確にするためのもの、いわば本のテーマです。主題が複数に渡る場合は、最大9件まで入力することがあります。


児童書の場合は「学習件名」を入力します。本の中に複数の主題があることが多いので、目次の数だけ入力するような場合もありますね。こちらは最大99件までです。

−−なぜ「主題」ではなく「件名」という名前なんでしょう。


豊田:「件名」は、「主題を簡潔な言葉で表した」もので、件名標目表により、使用する言葉を決定します。「主題」そのままではないので、「主題」と区別する意味で「件名」という名称がつけられたものと思われます。

−−うむむ、そうだったんですね。因みに、件名って今いくつくらいあるんですか?

豊田:そうですね・・・確か98,000件くらいです。世の中の動きや流行とともに、日々新しい件名が追加されています。分類や件名の入力をしていると、世間のトレンドを知ることができて面白いですよ。

−−件名というのは、どうやらウェブで言うところの「タグ」と同じような役割みたいですね。これは活用すると、資料探しがぐっと楽になりそうな予感。。

「件名」は、誰でも使えますか?

豊田:あまり知られていませんが、実は件名は調べものの時にとても便利です。


例えば通常、調べたいことのキーワードを入力して本を探すと思うのですが、それだとキーワードに少しでも関係のあるものが全て結果に表示されてしまい、実際読んでみると、調べたいことには触れられていなかった、なんてことも少なくありません。

そこで件名での検索が有効です。主題(テーマ)で探すので、目的の本に素早くたどり着くことができます。


また、児童書の場合、1ページだけそのことが触れられているということもよくあります。1冊ずつ本の内容にあたるのは大変ですが、学習件名で予め絞り込んでおけば、必要な情報を効率よく得ることができます。

−−「件名」での検索はどうやったらできますか?

豊田:図書館での蔵書検索システムで検索をする際に利用できます。詳細検索画面を開いて、「件名」の覧に調べたい件名を入れて検索するだけです。そうすると、調べたいテーマに関する本だけが表示されますよ。

成田市立図書館の蔵書検索画面

−−なるほど、全然知りませんでした。

豊田:件名での検索はとっても便利なんです! でも件名はあまり知られていなくて、使われていないのが現状です。図書館によっては件名での検索ができない場合もあるみたいですが、的確に資料を検索できるので、ぜひ活用して頂きたいと思っています。

−−ありがとうございました。件名検索で調べものも効率的に進みそうですね。

カーリルで件名を使うには

カーリルの検索窓に「bookportal:(件名)」と入れて探してみてください。
図書館流通センターの運営するTRCブックポータルとの連携により、カーリルでも件名での検索ができるようになりました。面白い本が見つかるかも。

(杉山@カーリル

<関連リンク>
株式会社図書館流通センター
TRCデータ部ログ
件名標目委員会|日本図書館協会
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