痛快文学賞ガイド『文学賞メッタ斬り!』。
芥川賞・直木賞他、話題のホラー小説大賞等、50を越える国内小説賞について、どんな傾向の賞なのかを検証し、また選考の内幕やトラブルなどにも斬り込んで文学賞を判定したのが本作。
その著者のひとり、大森望さんが、大学生による文学賞「大学読書人大賞」のために、講演会を開催すると聞き、カーリルもお邪魔してきました。
演題は「推薦文の書き方&大学読書人大賞メッタ斬り!」。
大学読書人大賞の選考方法は、大学生が書いた推薦文を元に文学賞を決めるというもの。その推薦文をメッタ斬りしようというのです。どんな辛口の評価が飛び出すのかドキドキしますね。
以下、講演内容を抜粋してお送りします。
◆推薦文(=書評)の書き方について
・書評の書き方にこれといった決まりはない。
・媒体や立場、文字数や記名するかどうかによって異なる。
・自分で選んだ本なのか、予め決められた本なのか。
・例えばアイドルが書くのであれば、そのアイドルの読書事情や個人的なエピソードを読者は求めている
◆これまでの大学読書人大賞の推薦文を斬る!
◇2008年度大賞『幼年期の終わり』
推薦文:虚構の中に未来への姿勢が垣間見える(法政大学物書き同盟)
・古典新訳文庫なので、まずは翻訳者について触れるべきであろう。
・過去の訳についても触れておくとよい。(タイトルが異なることも特徴)
・あらすじを書かない言い訳はしなくてもよいのでは。全体が面白ければあらすじは無しでOK。
・本文を抽出しているが、この部分だけだと、SFのはずが歴史小説に見えてバランスが悪い。
◇2009年度大賞『好き好き大好き超愛してる。』
推薦文:「祈り」の文学を感受せよ(立教大学文芸思想研究会)
・最初の段落はなくてもよいのでは。書くなら自分の実感がわかるような個人的な体験の方が良い。
・ヒートアップして熱いのはわかるが、理由が書かれていない。「読まれるべき」とは書かない方が良い。押しつけがましくない書き方が必要だろう。
・1600字もあるので、起承転結を意識してメリハリをつけるべき。ずっと熱いと読むのに疲れてしまう。
◇2010年度大賞『夜は短し歩けよ乙女』
推薦文:独特恋愛ファンタジー(慶應義塾大学三田文学塾生会)
・「杏仁豆腐の味にも似た人生の妙味」をあなたはご存知だろうか。で始まるのは良い。が、すぐ後の文でその答えが出てしまうのはもったいない
・最初にこの小説の内容をある程度書いておいた方がいい。中身がわからないと、言っていることがどう関係するのかがわからない。
・文体について言及するなら、魅力を伝えるためにも3行-4行程度作中の文の引用をするべき。
◇2011年度大賞『天地明察』
推薦文:暦を作った男、渋川春海とその息吹(関西大学現代文学研究部)
・『一行の男』という表現はとても気が利いている。本を手に取らせるきっかけとして大変良い。
・ただ、本の内容については紹介というよりは、感想文っぽい。まずは何が書かれていたかに言及してからの方がよいだろう。
・「~のだ。」文は押しつけがましいので、取ってしまってもよい。共感を誘う書き方を考えた方がいい。
◇2012年度大賞『ハーモニー』
推薦文:伊藤計劃という「視点」(中央大学文学会)
・著者の伊藤さんは亡くなっているので、それに触れるのもアリだとは思うが、最初に書いてしまうと敬遠する人がいるのでは。
・「SFを小馬鹿にしていたが、この小説で変わった」というエピソードを紹介するのは良いが、もう少し具体的にどのようにということを書いてもいい。
・小説のテーマより、初めて読む人に向けてはあらすじを書くべき。紹介するという視点が足りない。
◇全体として
・全体的に堅い。大上段に振りかぶっているものが多い。もっと肩の力を抜いてもいいのでは。
・読む人のことを考えて書くべき。
・その本を読んだことがない友人、知人にも推薦文を読んでもらい、言いたいことが伝わるかを確かめた方がよい。
・引用が下手。勘所となる部分をうまく引用して、小説の魅力を伝えたいところ。
・・・厳しいご指摘多数ですね!
大学生の皆さん、ぜひこちらも参考に推薦文に取り組んでみてください。
私もブログを書く際に気を付けたいと思います。
さて、この大学読書人大賞、選考はこのような形で行われます。
現在、一次投票が終わり、候補の24作品が出そろったところです。
>>候補作はこちら
次のステップは、今回の講演会を参考に、推薦文を書くこと。
2次投票からの参加ももちろん大歓迎とのことですので、全国の大学文芸サークルの皆さん、ぜひ大賞選考に参加しませんか?
参加のお問い合わせは、大学読書人大賞事務局まで。
今回の大賞がどの作品になるか、楽しみですね♪
<関連リンク>
・大学読書人大賞 公式サイト
・大学読書人大賞 公式Twitter
・大学読書人大賞2013候補作
・大森望さん公式Twitter
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