学校図書館を、もっと楽しく。埼玉県高校図書館フェスティバルファイナル

埼玉県立高校図書館の司書採用再開を目指してスタートした「埼玉県高校図書館フェスティバル」が、3回目の今年、ついにファイナルを迎えました。

埼玉県立高校の図書館は、司書設置率100%。しかし、2012年度までの11年間、様々な理由により新規採用がなくなっていました。

そこで、学校司書の採用再開を目指す有志が2009年に研究会を発足し、学校司書の必要性を訴えるため、「埼玉県内の司書が選ぶイチオシ本」を選出し、またフェスティバルを開催してきました。

これらの熱い働きかけにより、ついにこの2013年春、新規で3名が県立高校図書館の司書として採用されました。3名とも男性で、高校図書館勤務希望だったとのこと。

待望の新人を迎え、当初の目的を達成したフェスティバルは、今回がひとつの節目となります。

「専任・専門・正規」の司書がいるからこそできる図書館活動とはどのようなものでしょうか。
最後もアツイ、埼玉県の学校司書の皆さんからの報告をお伝えします。

「ともに創る図書館活動」

埼玉県立飯能高校では、現代社会の授業で生徒が新聞をつくります。その際には、図書館をフル活用して資料を集めることが大切だとか。

事前に先生と司書が「薬物乱用」「少年犯罪」「環境問題」等、いくつかテーマを設定し、それに沿って資料(本)を集めます。既存の蔵書の他にも、新しく購入する本もあれば、学校図書館ネットワークで取り寄せた本もあるそう。

生徒は自らテーマを決め、本を選び、新聞をつくっていきます。どうしたら自分の必要な資料を手に入れられるかは、いかに司書とうまくコミュニケーションを取れるかとも関わっているため、生徒は資料の探し方だけではなく、対人関係も学ぶことができるとのことです。

もちろん、この授業のためには先生が司書と連携することが必要です。スムーズに授業を進められるよう、テーマ決めや資料集め等、司書に頼るところも大きいということでした。

埼玉県立秩父高校の事例では、読書会の体験をOBの原康浩さんが語ってくれました。

読書会の実施のためには、参加者は2回、司会者は最低3回、テーマ本を読み込む必要があります。その上で、周りの参加者と自由に感想を語り合い、また自分の体験を伝えることもあるそう。

本に親しんでいない高校生にとって、「本を読む」のは「国語の教科書で、決まった解釈を勉強する」ことだという原さん。しかし読書会では、どんな解釈をしてもいいし、自由に読んでいい。それがとても新鮮で面白いと言います。

司書は読書会のテーマ本決めや本集め等の支援を通して、高校生に読書の楽しさ、自由さを伝えているということでした。

高校生に読んでほしい! 高校司書が選んだイチオシ本

フェスティバルの会場には、司書の皆さんによるきれいな飾り付けとともに、イチオシ本等も展示されていました。

高校司書がピックアップした高校生にすすめたい本のベスト10を、2010年度から毎年2月に発表しています。これは、埼玉県内の高校司書の投票で選ばれているもの。本屋大賞の埼玉県高校版ですね。

2010年度、初代の第1位は『世界で一番美しい元素図鑑』。きれいな本で、持っているだけで司書がモテモテになれるんだそう。

2011年度の第1位は、本屋大賞でも1位を獲得し、映画化もされた『舟を編む』。読後は図書館の辞書コーナーへダッシュしたくなること間違いなしとのこと。

2012年度の第1位は『楽園のカンヴァス』。読んだら絶対にルソーの絵が見たくなるそうですよ。

これらのイチオシ本は、カーリルのレシピを使ってご紹介頂いています。気になる本が近くの図書館にあるか、探してみてくださいね。

学校図書館を、もっと楽しく

埼玉県高校図書館フェスティバルは、ここで一区切り。今後はウェブサイトの更新を中心に活動していくそうです。

図書館は楽しいものだということを、色々な活動を通してもっとたくさんの高校生に伝えたい。そして学校司書の価値を知ってほしい。そんな熱い気持ちは、まだまだ衰えたわけではありません。

会場には、埼玉だけでなく、東京や神奈川、茨城からの参加者もあり、インターネット中継では鹿児島の方もご覧になっていたそうです。フェスティバルは終わっても、今後も熱い司書たちの活躍で、どんどん図書館が楽しくなっていきそうですね。

(杉山@カーリル

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